台湾ウォシュレット事情【台湾生活】
現在、台湾ではトイレットペーパーを流せるトイレが増えている。
とはいえ、流せない所もまだまだ多い。
おしゃれなデバートであっても、トイレだけはグレーのタイルに囲まれた生臭い「ザ・公衆トイレ」だったりする。
「衛生紙請勿丟入馬桶内」などと張り紙があり、やたらでかいゴミ箱が置かれている。
台北や桃園などの都市部でもダメなのだから、地方に行ったらよほど新しい施設で無い限り、トイレットペーパーは流せないと思っていた方がいい。
もちろん、それはホテルも同様である。
桃園の防疫旅館に宿泊した際、フロントマンに
「トイレットッペーパーは流せますか?」
と尋ねたところ
「不行!(ダメ!)」
と力強く言われてしまった。
14日間のトイレ生活を考え、軽く絶望したことがある。
日本人としては、使用後のペーパーをそのままゴミ箱に入れるのは、かなり抵抗があるだろう。
そんな時のお助けアイテムが「ウォシュレット」だ。
ありがたいことに、防疫旅館にはTOTO のウォシュレットが設置されていた。
最近、便器ごと新しいタイプに変更したようだ。
おそらくこの御時世、感染予防対策として交換されたのだろう。
お尻を水洗いした後は、ペーパーで軽く水分を拭き取るだけなので、ゴミ箱に捨てても抵抗は無い。
おかげで、お掃除の人にゴミを出すときも、嫌な気分にならずに済んだ。
その後無事隔離生活は明け、お祝いを兼ねて夫と宜蘭旅行に行った。
宿泊したホテルの注意書きにもやっぱり「トイレットペーパーを流さないでください」の一文があった。
ホテルのトイレはバスルームと一体型で、洗い場と地続きの所に便器が設置されている。
しかし、便座はノーマルタイプだ。どうやって使用済みのペーパーを捨てるか考えていると、壁にハンドガン付きのホースが掛けられている事に気がついた。
どう見ても、床掃除などに使うヤツである。
そういえば、以前花蓮のホテルにもあったなあ…と、念のためネットで用途を調べてみた。
まさかの、床掃除ホース兼、ウォシュレットであった、
こんなのでお尻を洗って、怪我しないものなのだろうか、と不安になる。
使い方を調べると、至ってシンプル。
ハンドルを握って、勢いを調整しながら水を当てるだけらしい。
その時「前から派」と「後ろから派」に分かれており、いずれも「水を当てる反対側の体を便座に密着させ、汚水を便器内に落とす」が基本のようである。
試しに水道の蛇口を開け、ハンドガンの引き金を引いてみる。
ジャジャッー!!と勢いよく、水が床に叩き付けられた。なかなか勢いの調整が難しい。うっかりすると、汚水の被害が拡大しそうである。
慎重にお尻を便座に押し付け、足の間からホースを入れる。後ろからより前からの方がうまく行きそうだ。
初めての時こそ四苦八苦したものの、二、三回使えばすぐにコツが掴めた。
便座式だと勢いが弱い気がして、きれいに洗えたか不安になったものだが、そんな心配も浮かばないくらいサッパリした。さすが床掃除に使えるホース。
使い心地が気に入り、ぜひうちのトイレにも欲しいと、近所の五金店(生活雑貨店)で探してみる。
残念ながら、そこでは見つからなかったので、諦めてしばらく過ごしていた。
しかし、先日ホームセンターへ出かけた時に、ついに見つけてしまった。
シャワーホースに付け替え可能なハンドガン。約300円。安い。
2000円程のステンレス製もあったが、とりあえずお試しにしようと安い方を購入。
早速シャワーホースに付けてみた。
だけど、所詮は300円なのか。
根本部分からビャービャーとスプリンクラーのような水漏れを起こし、周囲も私もびしょ濡れになってしまった。
もしかしたらパッキンが無いのがいけないのかもしれない。と、翌日パッキンだけ買って付けてみた。
ーーーやっぱり、スプリンクラーである。
一番安いのを買ったのは失敗だったか、やはり2000円くらいするやつにしとけば良かった。
軽く後悔しながら、捨てるのももったいないと、小物入れに放り込んだ翌日。
私は、ギックリ腰を患った。
若い頃にも経験していたが、当時はそこまでひどくはならず、普通に生活できるくらいだった。
しかし今回は、立つことも座ることもできない。ただ、ソファーでぬいぐるみを抱え丸くなるだけである。
一生まともに歩けないかもしれない、と不安になる程の痛みだ。
このままただうずくまっていたい。
しかし、生き物である以上、生理現象はやってくる。
そう、トイレ問題である。
用をたす前に、皆はどのようにしているのかと、検索してみる。
だがどうにも自力で拭くことはできず、ウォシュレット頼みがほとんどのようだ。
あの、スプリンクラーを使うのか……。
ヨボヨボと壁伝いにトイレまで行き、痛みで震える手でハンドガンを装着する。
宜蘭では、後ろに体重をかけ前からシャワーを当てていた。だが、今は痛すぎて腰に体重をかけられない。
すでに水を出した状態なので、慌ててホースを背中側へ回す。体を少し前屈させ便座とお尻の間から、水を当てた。
すでにホースのつなぎ目からは水が天井近くまで飛び散っていた。
慌ててつなぎ目を覆うように手で握り直したが、すでに洗面台の鏡や、トイレットペーパーがびしょ濡れになってしまった。
踏んだり蹴ったりである。
用をたした後、泣きそうになりながら便器周りの掃除をする。
周囲の被害は甚大だ。
だけど、使用感は思ったほど悪くない。便座式のような洗い残しの不安はなかった。
なので、翌日から使う時の段取りを少し変えてみた。
水を出す前にホースをお尻側にスタンバイし、軽くハンドガンを握って水圧を逃す。ちょろちょろ水が出るようになったら、位置を固定させ蛇口をもう少し緩めた。つなぎ目から水が出てはいるが、そこまで飛び散ってはいない。
1分ほど水洗いし、先に蛇口を閉める。その後、お尻周りの水をタオルで拭けば、汚れも残らずさっぱりした。
ただ、昨日ほどでは無いがどうしても周囲に水が飛び、床掃除は必要であった。
1週間程で、幸い腰の痛みは引き始めた。そうすると、つなぎ目の水漏れをどうにかしようという気力も湧いてくる。
最初はビニールの絶縁テープを根本に巻いてみた。しかし効果は、無い。
次にシールテープなるもので修理可能という情報を得たものの、台湾でシールテープを見かけない。
何件かの五金店を回って諦めかけた時、ダイソーに似たようなものがあるのを発見した。その名も「伸ばしてくっつく融着テープ」。
どちらかというと絶縁テープのようだが、一応水道管の修理にも使えるとあるので試してみた。
絶縁テープよりましであるが、やはり水は吹き出してくる。
よく見ると水が漏れるところのパッキンが少し斜めに浮いている事に気づいた。
その下にあるのは、シャワーホースにねじ込むスクリュー部分のスジ。
もしかして根本のスジが邪魔なのでは…と考え、カッターで削ってみることにした。
すると少しフィットした様子だったので、そのまま一周分を削り取った。
更に融着テープを巻いて凸凹を減らし、パッキンで押さえるように密着させる。
シャワーホースにねじ込み、試しに水を出してみる。
今度はほとんど漏れて来なかった。
ただ1分以上ハンドガンを引かない状態にしていると、根本からまたもやピューピューと水を撒き散らし始めてしまう。
使う時に若干のテクニックは必要だが、それでも以前よりましな状態になった。
DIYを重ねること数回。
ようやく用をたした後、床掃除をしなくて済むようになった。
300円ウォシュレットの完成である。
数週間経った今、ギックリ腰はほぼ完治している。
無事、お尻は拭けるようになったが、このサッパリ感は忘れられず、毎日ジャバジャバとウォシュレットを愛用している。
ついでに床掃除もできるので、台湾式ウォシュレットは大活躍だ。
ただ日本に帰った時には、TOTOやINAXの便座一体型になるのだろう。
便利だけれど、サッパリ感に満足できるかが少し心配である。